ミャオ族は、中国西南部の雲貴高原を中心に国境を越えてインドシナ半島北部の山岳地帯に広範囲に分布・居住する民族で、中国領内に739万人(1990年)、ベトナム領内に60万人弱(1992年)、その他ラオス・タイ領内にも数万人規模で居住している。漢籍史料では、このように広範囲に拡散しているため「百苗」と称されることもあり、多数の分派集団の存在が認められる。従来は、主として女性が着用する衣裳をメルクマ―ルにして「紅苗」「青苗」「黒苗」「花苗」「白苗」の分派集団に分類することが多かったが、現在ではミャオ族が日常的に使用している言語系統(主として方言)により、大きく3つの分派集団に区分される。すなわち、第1は湘西方言を話す集団で、自称を「コ・ション」( )あるいは「ク―・スワン」( )と称する集団で、主に湖南省西部に分布し、従来は「紅苗」と称されていた。第2は黔東方言を話す集団で、自称を「ム―」( )とか「モ―」( )と称している。主に貴州省東南部に分布し、従来は「青苗」「黒苗」と称されていた集団である。第3は、川黔 方言を話す集団で、自称を「モン」( )または「ミュウ」( )と称している。主に、雲南省・四川省南部・貴州省西部・インドシナ半島北部へと広範囲に分布し、従来は「花苗」「白苗」と称されていた集団である。
このうち、第1の湘西方言を話す集団は漢語を自由に操れるなど最も漢民族化が進んでいる。女性の衣裳もズボンに上着という組み合わせで、すでに伝統的文化がうすくなっている。
第2の黔東方言の集団は、衣裳の材料に綿花を使用し、藍染めを施している。また、周辺に居住するトン族の影響か、更に藍染めした綿布に卵白や動物の血漿を塗りつける等の防水加工を施し「亮布」「蛋布」と称している。このほか植物の樹液などを利用したロウケツ染めの技術・刺繍・織物・銀飾など多彩で豊かな伝統文化の様相が色濃く認められる。※[資料1]参照
第3の川黔 方言の集団は、スカ―トの材料に大麻(火麻)から作られた麻布を使用していることに大きな特長が認められる。※[資料2]参照
本HPでは、金丸自身が収集したミャオ族の民族衣裳のコレクションを中心に個別に解説を試み、今後の研究の礎にしたい。 |