◆◆フィールドワーク*ベトナム編◇
Field Work
金丸良子
ベトナムの人口約7080万人(1992年人口センサス)のうち、約90パーセントが狭義のベトナム人とされるベト族である。その他、タイ族ターイ族ムオン族など合計54の民族集団がベトナムに居住している。これらベトナム以外の集団は少数民族と総称される。

ベトナムに居住する民族集団は、使用される言語系統によって「オウストロアジア語族」、「オウストロネシア語族」および「漢=チベット語族」に3分類されるが、大多数を占めるベト族が国土の全域にわたって分布、居住するのに対して、少数民族は北部と中・南部に居住する民族集団が異なっているという特色がみられる。
すなわち、北部では「オウストロアジア語族」と「漢=チベット語族」に所属する民族集団が中心であり、中国南部の雲南省などから移動してきたと推定される集団が比較的多い。一方、中・南部では「オウストロアジア語族」に属するクメール語族系の民族集団および「オウストロネシア語族」に所属する少数民族が主として居住している。
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モン族は、ベトナム北部に居住する代表的な山岳民族である。

つまり、ベトナム北部においては、海抜高度が100メートル以下のデルタおよび河谷を主体とする平
坦地ではベト族、比較的海抜高度の低い丘陵地にはターイ族タイ族などが、海抜高度が600メー
トル以上になるとダオ族が、さらに海抜高度が800メートルを超えるとモン族が主として分布している。

モン族の主要分布地域は、YEN BAI省のNghia LoからTHANH HOA省にかけてのダー川水系およびマー川の上流域である。モン族の集落は1ヶ所に集中して大集落を形成するのではなく、分散して居住する傾向がみられる。

そのため、主として女性が日常生活において着用している上着の色などを指標として「黒モン」族、「白モン」族、「青モン」族、「赤モン」族などに区分されてきた。

モン族は、このように分派集団が存在するが、祖先はすべて長江中・下流から淮河一帯にかけて居住していたとされる「三苗」であるとする見解が有力視されている。その後彼らは、漢民族の支配を逃れるため、西南中国に移動し、さらにその一部が南下し続け、ベトナム北部の山岳地帯に到達したものと考えられる。

なお、ベトナム側の文献によると、モン族がベトナムに来住した時期は、17世紀末、18世紀末および19世紀後半の3回存在するとされる。
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モン族の主要な生業形態は伝統的には焼畑農業であった。彼らがベトナムに南下してきたのは、漢民族の弾圧から逃れるためであったが、ベトナムの北部の山岳地帯には焼畑が行える森林が残っていたという自然条件も見逃すことができない。現在でも、陸稲を中心に焼畑農業に従事している者も多い。

今後は、予備調査の結果をふまえて、モン族の生業形態を中心とした生活状況を具体的に調査していきたい。

ベトナム(モン族)予備調査地一覧
1・SONLA省
2・LAICHAU省
3・LAICHAU省
4・LAICHAU省
5・LAOCAI省
6・LAOCAI省
7・HAGIANG省
8・LAOCAI省
9・LAOCAI省
10・LAOCAI省
11・YENBAI省
MocChau県 LoongLuong社 CuLoog班(青モン)
TuanGiao県 Hoa社 Hoxan班(青モン)
Mu'ongLay県 HuoiLong社 HanLeng班(紅モン)
SinHo県 PhinHo社Pavan班(白モン)
Sapa県 Xanxaho社 CatCat班(黒モン)
Baoyen県 DinhCong社 Vam班(花モン)
MeoVac県 Pavi社 ThirongPavi(白モン)
BacHa県 Banpho社 Banpho班(白モン)
BacHa県 Lauthingai社 ThonDithao班白モン)
BatXat県 DinThang社 Taphin班(白モン)
Vanchan県 Catthinh社 Kheken班(白モン)
1996年9月
1997年3月
1997年3月
1997年3月
1997年3月
1997年12月
1997年12月
1998年12月
1998年12月
1998年12月
1999年1月

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