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ベトナム水上人形劇 |
歴史・起源 |
![]() 1121年にHaNam省DuyTien地方のDoiパゴダに建てられた漢文の碑文によると、当時の文化人・Nguyen Cong Batが李王朝の宮廷で水上人形劇が催された光景を描写している。水上人形劇の起源については定説はないが、恐らく12世紀の碑文の記録以前に紅河デルタ地帯の稲作を中心とした農村で演じられていたことは容易に想像できる。 |
伝統的な水上人形劇 |
![]() 劇団は村ごとの職能組合で、それぞれ独自の「約束ごと」によって活動し、入団に際しては一座の秘伝を堅く守るという誓いを立てなければならず、現構成員の子供や孫が優先的に受け入れられる。かつては、泥水に長時間つかり人形を操ることに体力的に適さないと考えられたこと、また人形劇の秘伝が夫の家族へともれることを恐れて、女性参加は認められなかった。伝統的な水上人形劇団は、演劇のために使用する池を所有し、魚の養殖等で活動資金を捻出し、パゴダや寺院の毎年の定期公演を認められるという権利を有している。 |
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ハノイの水上人形劇 |
ハノイ市内で公演されている常設の劇団は、1967年に中央文化部の指導の下に成立した中央木偶戯院(Doan mua roi Trung Uong)と、ホアンキエム湖の湖畔で主に外国人観光客のために毎夜公演を行っている升龍木偶戯院(Doan mua roi Thang Long )である。このほか、ドイモイ政策以降、芸人一族で組織している紅河木偶戯団(Doan mua roi HongHa)等も存在し、ベトナム北部の各地で公演活動を行っている。※([資料1]click here!) |
芸人・Phan Van Ngaiの話 |
2001年12月末、ハノイの工房に芸人・Phan Van Ngai(※[資料1]click
here!)を訪ねて最近の活動状況などを取材した。
Phanの父・Phan Van Huyenは、1958年に中央文化部の招請でハノイの南100`に位置するNam Dinh省から上京した著名な芸人の一人で、Phan Van Ngai(1933年生)は、17才から父とともに公演活動に参加していたが、40名の団員とともにハノイに上京した。団員の大半は当時すでに40才を超えていたので、ハノイに活動拠点を移すのを好まず、一定の公演活動を終えると故郷に戻っていった。 Phanの父子は、その後1967年に成立した中央木偶戯院の活動に参加するなどしていたが、ドイモイ政策の実施にともなって、12名の団員で玉河団・紅河団を旗上げするなど一族を中心とする劇団を立ち上げ、ハノイを中心としたイベント会場での公演活動を実施している。これらの公演では、移動に便利なように、最大48 立方b・最小1.4立方bの容量のあるビニール製プールを組み立てて使用するという。工房(※[資料2]click here!)での取材の後で、実際に公演活動を行っている近くのイベント会場に移動して、Phanの息子や孫による3〜4名の団員による小規模な公演を見学した(※[資料3]click here!)。音響効果は、カセットテープを使用し、人形遣いのみの公演で、ベトナムの子供たちとともに水上人形劇を鑑賞するという貴重な体験をすることができ大変有意義であった。 Phan自身は、これまで800種類5000個近い人形を製作したという。 |
人形の製作とからくり |
水上人形に使用する人形は、水辺に植えられた「いちじく」(※[資料1]click
here!)を材料として作られたものである。ベトナム北部では、いちじくは大変有用な樹木で、若葉は豚のエサ、果実は魚のエサとなったり、塩漬けされて農民の食卓にのぼる。いちじくの幹が5〜6年で直径20〜25センチになると、人形を彫るのに使用される。人形の大きさは30〜100センチ、重さは1キロから5キロで、一座の職工が製作にあたるため、劇団ごとに姿形・衣装が異なっている。
人形は基本的には水上に出る胴体部と水中に沈める基礎部の2つの部分に分かれる。とくに基礎部は人形を操るいかだ状の仕掛けに固定し、垂直方向に安定させることがポイントである。また、人形に耐水性を持たせるために、木に穴をあけても大丈夫なようにウルシの樹脂で皮膜をつくり、その上から漆黒・金・銀・朱色など天然素材からの絵の具が重ねられる。 舞台の御簾に隠れた人形遣いは、竹または木のサオを用いて人形を操る。サオの一端には回転軸とカジをつけ、人形を簡単に回転させる。人形の動く範囲はサオの長さで変わり、およそ3.5〜4.5メートルである。サオとカジのほかにヒモの仕掛けを追加して、人形の頭・胴・肢に動きを与え、複雑な動きを作る。ヒモは、頭髪・ココナッツの繊維・絹・黄麻などを編んで作り、ロウを塗って防水性を持たせている。ヒモ式の仕掛けは、登場人物が多く動きの多い場面に用い、8人の仙女の舞・獅子舞・ボートレース等サオだけでは充分に操ることが出来ない大型の人形にも使う。(※[資料2]click here!) 人形の仕掛けをするうえで、最も重要なことは仕掛けを水中に隠しておくことで、人形遣いは、水を生かして思い通りに人形を動かす遠隔コントロールに習熟することが必要である。 |
公演プログラム |
水上人形劇では、ベトナムの民話・伝説・神話などから題材とした内容を、土の香りのするベトナム民謡の調べにのせ、テンポの早さとコミカルな人形の動きが観客を魅了している。
ホアンキエム湖畔の升龍木偶戯院の毎夜のプログラムを紹介しておくことにする。(※[資料1]click here!) |
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