3. タンカ
タンカとは、(Thangka)とは、チベット仏教に用いられる布製宗教画の総称で、チベットでは「タングゥー」と呼ばれる。布の上に描いた絵画に錦緞軸の装飾を加えたもので、中国語では「唐(タンカ)」「巻軸佛画」「藏布画」とも称される。
製作に使用する材料や技法から「彩色タンカ」「刺繍タンカ」「織物タンカ」「鉱石タンカ」などに分類される。
また内容から、転生輪廻や宇宙観をあらわした「曼荼羅(マンダラ)」、釈迦牟尼や阿弥陀如来をはじめとする各仏様、観音菩薩や文殊菩薩をはじめとする各菩薩、大威徳金剛や吉祥天をはじめとする護法神などがある。とくに、チベット仏教に功績のあった歴代のダライラマやパンチェンラマなどの高僧を描くこともある。また独自な発展をとげたチベット医学を反映した「医学タンカ」も大変興味深い。このほか歴史的故事にちなんだものや生活を描いたものも一部には見うけられる。

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六道輪廻(スィーパ・コルロ)
仏教では生類の存在様式を6つ(天・人・阿修羅・畜生・餓鬼・地獄)に大別する。「生死輪廻図」ともいう。これらの様式を誰にでも一目でわかるように図示したもの。チベット仏教の重大な儀式では、このマンダラのタンカを最初に掲げ、邪悪な妖魔をはらう役割をすると考えられている。

 
三世佛
チベット仏教の寺院の中でよく見られるのが三佛並坐しているのが「三世佛像」である。三佛とは釈迦牟尼佛を中央にして、燃灯佛を左に、弥勒佛を右にしている。三尊佛の造型は完全に一致しているが、手ぶりには多少の変化がみられる。三世とは、過去佛(燃灯佛)、現在佛(釈迦牟尼)、未来佛(弥勒佛)である。
無量光佛(阿弥陀佛)
日本でいう「阿弥陀様」。大日如来をはじめとする「五仏」の一員で、西方極楽浄土に住まうのが無量光阿弥陀如来。

 
観音菩薩(チェンレースィ)
自らは悟りに至ったものの、他の命あるものたちが悟りに到るのを手助けするために、あえて輪廻の輪の中にとどまる存在が「菩薩」である。観音菩薩は、すべての命あるものを慈悲の力で手助けする「慈悲の菩薩」。ダライ・ラマ法王は観音菩薩の化身とされている。
手が4本なのは四臂観音千手千眼観音は11の顔と千の手、掌に千の眼をもつ。あらゆる方向を見渡して手をさしのべるため。頭の頂上には阿弥陀如来を戴いている。

 
文殊菩薩(ジャンペーヤン)
智慧の菩薩。右手は煩悩の根源を断ち切る剣を振り上げ、左側の蓮の上には智慧を象徴する「般若経」をもつ。このタンカは、織物でできている。
ターラ菩薩(ドルマ)
衆生の苦しみを減らすことが出来ないことを悲しんだ観音菩薩が涙を流し、右眼からの涙は「白ターラ菩薩(白度母)」、左眼からの涙は「緑ターラ菩薩(緑度母)」が生まれた。両ターラ菩薩は、観音菩薩を助けてすべての命あるものを苦しみから救う人気ある女尊。
白ターラ菩薩(ドルカル)は、身体は白、掌と足の裏に1つずつ、そして顔に3つ、合計7つの眼をもつ。右手はすべての願いをかなえることを意味する「与願印」を結び、左手には青い蓮をもつ。
緑ターラ菩薩(ドルシャン)は、身体は緑、右脚をやや崩して蓮の葉の上に乗せる姿勢が多い。右手は「与願印」、両手に青い蓮をもつ。
護法神(チューキョン)
邪悪なものから仏教の教えを守ってくれる護法神は、恐ろしげな形相をした忿怒尊の姿で描かれる。インドの神々が取り入れられたものや、仏教が入ってくる以前からチベットにいた土着の神々がグル・リンポチェに説き伏せられて改宗したものが多い。
大威徳金剛(ドルジェ・ジグジェ)は、水牛の頭をもつゲルク派の守り本尊(イダム)。
吉祥天(パンデン・ラモ)は、もともとはインドの神シュリ・デヴィ。女神とは思えない形相だが、歴代ダライ・ラマの守り本尊であり、チベット政府の守り本尊でもある。
時輪金剛(トゥコル)は、密教が達した最高の教義である時輪タントラを表わす神。インド名はカーラチャクラ。男尊と女尊が抱き合った父母仏(ヤブユム)の姿で描かれる。
このほか、寺院を守る四天王として、西を守る「広目天」、北を守る「毘沙門天(多門天)」は、黄色い身体に宝を吐き出すマングースと勝利の幡をもつ財宝の神でもある。南を守る「増長天」、東を守る「持国天」は琵琶をもつ。



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