人形製作の工人を訪ねて

工人・盧福増氏(1948年生)の話
唐山市豊潤に居住する盧福増氏は人形製作(刻皮影)の工人である。1976年頃から本格的に人形製作に携わるようになる。唐山大地震の影響で肢に障害が残り、力仕事に従事することが出来なくなったためである。唐山地区は影絵芝居が大変盛んで、各村ごとに「影戯(インシー)」の劇団があり、人形製作に携わる者も多かった。盧氏のかつて居住していた村(李庄鎮小漫港村)にも老工人・王維堂が人形製作をしていたので見よう見まねで始めた。1976年以前は、遊びで紙製の人形を遊びで作っていた。盧氏の家では、祖父が国画を描き、父は切り紙(剪紙)をしていた。人形製作の材料は、主にロバの皮を使用するが、大きな人形は牛の皮を用いる。ロバの皮は、2〜3日水に浸けて軟らかくした後、専用の台に載せ「大刮刀」で肉や毛をおとし、「刮刀」で皮を薄く剥ぐ。彫刻刀などを用いて人形をかたどり、印刷用の化学染料を用いて黒・白・ピンク・黄・赤・緑・深緑・黄緑・藍の9種類の色を塗り、仕上げに艶出しの桐油を2度塗って完成させる。現在、製作している人形は大きさにより、2尺・1尺半・1尺2寸・9寸に分けられる。また、役柄により、生・旦・・末・丑など、舞台道具として椅子・卓・馬・轎・輦なども製作するので、製作する種類は数百種にものぼる。作品は、唐山地区の劇団をはじめ、香港・湖南・西安・東北・北京などの劇団に売却している。1年間に使用するロバ・牛の皮は、200枚ぐらいである。劇団によっては原料のなめし皮だけを購入する場合もある。
盧福増氏(皮をなめしている)
なめし皮
彩色用道具
完成作品※盧福増氏作
─開店─ ─小旦─
金丸良子所蔵

工人・劉佳文氏(1940年生)の話
劉佳文氏は、楽亭県皮影劇団にかつて所属した人形製作の工人である。祖父・父の商売の関係で1951年2月までハルピンに居住していたが、11歳で原籍地の楽亭県に戻った。子供の頃から、芝居を見たり、画を鑑賞するのが好きであったので、縁日(廟会)で紙影人を購入して、遊びで人形製作をしたこともある。1973年から楽亭県皮影劇団に所属して、人形製作・背景描き・演出・劇本編集などを担当していたが、現在は退団して自宅で人形製作を中心に活動している。人形製作には、ロバ・馬・牛などの皮を使用するが、大きな人形は上半身はロバの皮、下半身は牛の皮を使うなど混合して用いる場合もある。かつては、劇場が小規模であったので人形も8.5寸と小さく、後に1.2尺となり、最大のものは2.5尺である。1年間に製作する数量は一定しないが、昨年は5〜6枚の皮を唐山の盧福増氏のところから購入した。羊・犬の皮を用いたことはない。色付けは、以前は布を染める化学染料を用いていたが、現在では印刷用の「透明水色」を使用している。仕上げには桐油を1〜2度塗って、艶出しをする。
劉佳文氏
完成作品※劉佳文氏作
─武旦─ ─小旦─
金丸良子所蔵

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