別集 収集史料目録・文献目録(付:収集地域図)

 

はじめに                       速水 融

文献目録・史料目録                  浜野 潔

 

 

はじめに                     速 水  融

 

 この別集には、「ユーラシア社会の人口・家族構造比較史研究」の産物の一つである、収集史料(日本の江戸時代・明治初期の宗門改帳、人別改帳)目録、歴史人口学および家族史に関する文献目録を収録した。

 このような研究の基礎情報を提供することは、研究自身とともに、研究費の交付を受けた者の務めと考えたからである。

 ただし、文献目録はともかく、収集史料目録は、収集したからといって、すべて公開されてはいない。なぜなら、宗門改帳や人別改帳のように個人名の記されている個人や家族の記録は、たとえそれが130年以上以前のものであろうと、いま生きている方々の先祖の記録であり、プライヴァシーにかかわる事柄を含んでいるからである。従って、目録にある史料を利用するに際しては、原則として原蔵者の許可を得て頂きたい。

 それでは、このような目録の作成にどのような意味があるか、といえば、これにざっと眼を通しただけでも、近世日本は、如何に人口史料に恵まれた社会であるか、が理解できる。と同時に、われわれの努力の結果(プロジェクト発足前の収集作業を含めて)には、かなり地理的な偏りがあって、かなり史料の集まっている地域もある一方では、あまり集まっていない地域もあり、いわば史料収集の密度に差があるのも事実なのである。これらの空白域については、今後の史料調査を期待するが、かなり収集した地域であっても、なお一層の努力を重ね、日本全国を覆う密度を高める必要がある。

 この目録作成は、筆者が提言したものであるが、収集史料目録については、高橋美由紀(研究協力者)、歴史人口学文献目録については浜野 潔、家族史文献目録については、落合恵美子が担当したが、最終の責任は筆者にある。

 目録は、CD−ROM版と、それを印刷した冊子体の双方がある。また、これらは、決して最終版ではない。この種の編集物の常として、誤記の訂正、追加は今後少なくないだろう。適当な間隔を置いて、最新版を作成してゆきたい、と考えている。

                              速水 融

e-mail: ahayami@reitaku-u.ac.jp

 

文献目録・史料目録              浜 野  潔

 

1 歴史人口学文献目録

 いかなる分野の研究においても、過去の研究の蓄積を知るてだてとしての文献目録の整備は不可欠である。歴史人口学においては、国際的な文献目録の整備が、1978年より国際歴史人口学会(Committee on Historical Demography, IUSSP)の手で行われており、日本もこの事業に参加している。しかし、ここに収録されている文献は日本の歴史人口学研究すべてを網羅しているわけでない。とくに、地方史レベルで行われてきたモノグラフの類は十分にカバーされていない。また、この目録が英文で出版されている点も、国内での利用には不便である。

 一方、邦文による文献目録は、1969年に社会経済史学会から出版された『経済史における人口』の巻末に掲載された目録がこれまで唯一のものである。この本は、社会経済史学会の全国大会において、歴史人口学が共通論題として取りあげられた時の報告集である。この大会をきっかけに歴史人口学の存在が知られるようになったともいえる記念碑的なものであるが、当然のことながらこの文献目録はごく初期の成果をカバーするに過ぎない。

 このような状況のもと、本プロジェクト開始にあたり研究者の便宜のため新しい文献目録を作成することは急務の課題となった。そこで、今回の目録に関しては次のような方針を取ることとした。

1) 文献目録は、PC上にデータベースを作成し、インターネットで常時公開できるようにする。

2) まず、これまで作成された唯一の文献目録である『経済史における人口』の巻末目録をすべて入力する。

3) 次に、速水融が個人的に収集した抜刷・文献コピーなどから歴史人口学関係のものを抜き出し、入力する。

4) 本プロジェクトメンバーがこれまで執筆した文献について提出を求め、入力する。

5)雑誌文献に関しては、歴史人口学関係の登載の多いものについて、悉皆調査を行い、入力する(1)

この結果、現在までに「歴史人口学文献目録」に収録された文献数は1,603件となっている。

 データベースの収録項目は、標題(邦文・欧文)、著者名(邦文・欧文)、種類(著書・編著論文・雑誌論文)、掲載書・雑誌名、刊行年・月、刊行者を原則としている。この他、利用可能であれば参考文献・抄録の有無、依拠した資・史料、分析方法、図表の枚数、要約などの内容が入力可能となっている。これらの項目は、国際人口学会の歴史人口学文献目録において収録対象とされている項目であることを考慮して決められた。

 データベースはウェブサーバー上に掲載し、検索システムとともに、プロジェクトメンバーおよび一般研究者の利用に供している。また、データの一覧を必要とする場合には、データベースそのものをダウンロードすることも可能である。

 

 検索システムは、インターネット上で広く使われているNamazuv1.3.0.5(2)を用いている。このシステムでは、あらかじめデータベースの内容を品詞分解して別ファイル用意しておくことにより、きわめて高速に全文検索を行うことが可能である。検索に用いるデータは、論文タイトル・著者名・雑誌名など、入力したデータすべてを網羅している。


2.家族史文献目録

 歴史人口学文献目録には、当初、家族史の文献も一部含めて構築していたが、家族史の分野はかなり広いため、有用なデータベースを作ろうと思えば、別個のデータベースとして用意べきだと認識されるようになった。そこで、歴史人口学文献目録とは独立に家族史文献目録の構築が進行中である。

 家族史文献目録データベースは、1869年から1997年までに刊行された家族史に関する文献の目録を集成したものであり、現段階では8,146件のデータが収録済である。収録対象は、原則として1945年以前の家族・家・親族・女性を対象とする研究文献とした。データソースとしては、冊子体の文献目録・各種学術雑誌に収録されている文献目録・学術雑誌の総目録などを利用している(3)

 家族史文献目録も前述した、歴史人口学文献目録と同じURLで広く一般に公開されている。

[補足]

上記の歴史人口学・家族史文献目録はプロジェクト終了後、「家族史・人口史文献データベース」として国際日本文化研究センターにて一般公開されている。ただし、その後の文献追加は行われていないので、このデータベースは2000年以前のものとして利用する必要がある。現在のURLは以下のとおりである。(2006.2.18)

http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/family.html

 

3.収集史料目録

 本プロジェクト開始以前から現時点に至るまでに収集した近世(一部は近代)日本人口に関する一次史料、およびそれらをデータベース化したものは、かなりの分量になる。共同研究を行い、また将来的にその蓄積を公開するためには、史料目録を作成しておくことは不可欠である。そこで、すべての史料について村ごとにユニークな番号を付したデータベースが構築された。単位とする村は原則として木村礎校訂『旧領旧高取調高帳』(1995、東京堂出版[原書は近藤出版])に準じている。

 近世(庶民)人口に関する一次史料としては「宗門改帳(SAC)、あるいは人別改帳(NAC)」「増減帳」「人別送状」「過去帳」などをあげることができる。本プロジェクトにおいては、おもに「宗門改帳」「人別改帳」から時系列データおよび横断面データを作成し、研究の要に供していることから、本目録もこれらの「人別改帳」および「宗門改帳」の収集状況把握を主眼として作成した。

 一次史料の収集は@史料そのものを収集する、A史料をマイクロ・フィルムで撮影する、B史料(もしくは史料のコピー)を紙焼きする、といった方法が考えられる。本プロジェクトにおける史料収集はAの形態をとるものがもっとも多い(「史料収集」の項も参照されたい)。

 このようにして収集された史料(各年ごとの文書)は、研究代表者速水融が開発したBDS(Basic Data Sheet)と呼ばれるシートに写し取られる。このシートには、原則としてすべてのデータが記入されているため、途中で原史料にもどらなくても、ほぼすべての分析が実施可能である。また、古文書を読むことができない研究者でも、人口史料へフルにアクセスすることを可能にしたという点で、画期的といえよう。

 このシートを、誤りがないか丹念にチェックした上で(データ・クリーニング)、史料に登場する者すべてに個人番号をつけ、デジタル・データとして各種統計分析が可能となるようコンピュータ上でデータ・ベース化が行われた(「データベース・入力」の項を参照されたい)。

 史料目録においては、

1) その史料がどの地域・どの村に属するのか

2) 史料収集の状況。当該史料の所蔵者はどの機関(または個人)か

3) データ・ベース化の進捗状況

4) さらに、データ・ベースから統計分析が行えるようになった地域に関して、史料残存年と、それぞれの年ごとにどのような史料が収集されているのかが分かること

という4つを重点項目としている。

 現在、史料目録は、2つの種類のデータベースに分けて構築されている。

 

T.村情報目録

 「村情報目録」には、北は樺太から南は鹿児島県まで日本全国の約900ヵ村弱の村が含まれている。この目録は、村が基本単位ではあるが、単年度ごと・史料種類ごとの個別史料として数えた場合、対象となる史料の点数は約6,000点におよぶ。

 

U.個別史料目録

 もっとも良質な史料を有する東北日本・中央日本・西南日本の各地域に関しては「個別史料目録」とよぶ、より詳しいデータ・ベースの構築を行った。すなわち、この目録は、個々の文書史料に関して各年ごとの詳細な情報が含まれている。現在、東北日本でば陸奥国安達郡仁井田村・安積郡下守屋村・安積郡[1]郡山町・田村郡上行合村・田村郡駒屋村(現在は福島県に含まれる)、および出羽国村山郡山口村(現在山形県)、中央日本でば、美濃国安八郡西条村・美濃国多芸郡有尾新田村など(現在岐阜県)、西南日本でば肥前国彼杵郡野母村(現在長崎県)、肥後国天草郡高浜村(現在熊本県)など約50ヵ村について作成が進行中である(同じ地域内で、単年分しか史料のない村を含む)。

 個別史料目録は、ハード・コピーを製本した形で利用可能であるほか、ネットワーク上での利用もプロジェクト内部に限って行われている(データ・ベース用のプログラムはIBMDB2を用いている)。しかし、この種の情報には個人所蔵者などの情報も含まれるため、公開にあたっては充分な配慮が必要である。したがって、現時点においては一般公開データ・ベースとはしていない。

 

(1)歴史人口学文献目録に関して、悉皆調査を行った雑誌は、次の通り。

三田学会雑誌・社会経済史学・Journal of Family History・徳川林政史研究所紀要・ 史学雑誌・地方史研究・経済論叢・人口学研究・日本研究(国際日本文化研究センター紀要)・地理学評論

(2)Namazuに関しては、馬場肇『日本語全文検索システムの構築と活用』(ソフトバンク)を参照せよ。 

(3)家族史文献目録に関して、文献目録を参照したものは次の通り。

家族社会学セミナー・季刊社会学・社会科学ジャーナル・社会学評論

 

総目次などを参照したものは次の通り。

日本民俗学・社会学雑誌・法制史研究・歴史評論・日本民俗学会報・史学雑誌・人口問題研究・日本社会学院年報・(年報)社会学・日本史研究・村落社会研究・民族学研究・歴史学研究・社会経済史学・三田学会雑誌・家族史研究・ソシオロジ