Congressus Nonus Internationalis Fenno-Ugristarum (第9回国際フィン・ウゴル学会議, FU9)は,エストニア共和国第2の都市タルトにて開催されました。会議では,2000年8月7日から13日まで,途中遠足を挟んで計6日間,講演と研究発表を中心とした様々な催しが行われました。
会議は,議長であるタルト大学ウラル言語学科のトヌ・セイレンタルTõnu Seilenthal助教授による,英語,エストニア語,ドイツ語,ハンガリー語,フィンランド語,フランス語,ロシア語,ラテン語の8つの言語による開会の挨拶で幕を開けました。
会議は以下の4つの分科会に分かれて行われました。
発表言語として,前述の8言語のうち,ラテン語を除く7つの言語が用いられ,全部でおよそ400の講演や研究発表がありました。会議には,世界26ヶ国からおよそ1,000人(正式登録者は767人)もの研究者が参加したそうです。
8月10日には遠足が催され,セットゥ,ヴォル,ヴァルガなど,エストニア各地に足を伸ばす貴重な機会となりました。その他にも,民族音楽のコンサートや各国大使館によるレセプションなどが連日行われました。展示では,ウラル研究関連の書籍や古地図,岩肌に描かれた古代の絵画の記録写真などの豊富なコレクションが参加者を魅了しました。
日本からは,海外で活躍している研究者を含め20名 以上が参加し,6件の研究発表がありました。 会議の合間をぬって,日本人参加者有志が集まって楽しい夕べを過ごす機会もあり (写真をご覧下さい),大いに親交を深めることができました。
最後に,閉会式の席上セイレンタル議長が言及したように,今回の会議の特筆すべき成果の一つとして,文字コード体系の世界標準として策定が進むユニコード(Universal Character Set, ISO/IEC 10646)に,ウラル系言語の記述に用いる音声記号FUPA (Finno-Ugric Phonetic Alphabet)注 を加える運動に対し,会議の支持が表明されたことを挙げたいと思います。FUPAを正式にユニコードに組み入れる動きが加速し,これまで収集されてきたウラル系諸言語の言語データの電子化への道が一日も早く開かれることが期待されます。
次回の会議は,マリ共和国の首都ヨシュカル・オラで2005年に開催されます。
注: FUPA については以下のPDF文書 (URL: http://www.evertype.com/standards/iso10646/pdf/fupa-draft.pdf http://www.egt.ie/standards/iso10646/pdf/fupa-draft.pdf) をご参照下さい。
NEW! updated 2002-01-31 FUPA ドラフトの新しいバージョンが公開されました: http://www.evertype.com/standards/iso10646/pdf/fupa-2002-01-30.pdf ( ユニコード拡張計画中の FUPA の位置付け)
『ウラル学会通信』第50号 (2001年6月発行) に掲載されたものを転載しています。
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