last update: 2006-12-18 |
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フィンランド語の辞書 CD-ROM を日本語版 Windows で使う[ご注意] このページは,utf-8でエンコードされています。また,画像フォーマットにPNGを使っています。 |
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Windows95/98/Me では,仕様により,ソフトウエア上で利用できる文字の種類に制限があります。日本語版 Windows の場合,基本的に日本語 (Shift JIS) で表現できない文字を扱うのが苦手です。たとえば ä や ö といった Shift JIS にない文字を利用するには,これらの文字の入力をサポートするソフトウエアに頼らなくてはなりません。逆に言うと,外国で作られたソフトウエアは,その言語のバージョンの Windows で利用することを想定しているために,日本語版の Windows ではうまく動かないことがあります (最悪の場合,Windows 内で用いられる重要なファイルが,同じ名前の日本語でないバージョンのファイルに書き換えられ,Windows が立ち上がらなくなることさえあります)。
補足: .NET Framework 対応ソフトなど,新しいプログラムでは,参照する共有コンポーネント (DLLやCOM) の扱いが厳重になっているので,ソフトのインストールで OS がクラッシュする問題は起こりにくくなっています。
たとえば,Windows95/98 で市販のフィンランド語の辞書CD-ROMを使う場合,以下のような問題が発生します。
日本語Windows98 | 正しい表示の例 (英語版Windows3.1) |
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WSOY の辞書で入力ができない問題は特に深刻です。一方 CD-perussanakirja の場合は,「コントロールパネル」から「キーボード」を開き,設定画面 (キーボードのプロパティ) で言語とキーボードのレイアウトに「フィンランド語」を追加すれば,検索文字をフィンランド語で入力できるようになります。[画像]
補足:フィンランド語は西ヨーロッパ言語の文字体系をそのまま使います。ギリシア語,キリル言語(ロシア語など),トルコ語,バルト言語(エストニア語を含む),中央ヨーロッパ言語の場合と異なり,特別な文字を使わないので,すぐに言語を追加できます。Windows9x の「多国語サポート」の導入は必要ありません。
このように,基本ソフトである Windows が言語や地域によって異なる文字セットを用いているために,外国語のソフトがうまく動かないという問題は,Windows2000, および WindowsXP の登場で,ある程度解決されます。これらの新しい基本ソフトは,プログラムの想定する言語・地域の設定に合わせて,Windows 自体の言語・地域の設定 (ロケール) を,日本語から他の言語に変更することができます。
補足:システムのロケールを日本語以外に変更することで,異なるロケールを想定してプログラムされているソフトは動くようになりますが,逆に,日本語をロケールとするソフトウエアでは,当然日本語表示ができなくなります。MS Office2000/XP のような,本格的な Unicode アプリケーションでなければ,ほとんどのソフトで何らかの文字化けが起こるのが現実のようです。したがって,この方法で異なるロケールを使うソフトウエアを同時に起動することはできません (ちょうどマルチブート仕様で1つのパソコンにインストールしたOSを同時に起動できない状態に似ていますね)。
日本語からフィンランド語へロケールを変更すると,WSOY の辞書への入力が可能になります。やはり,基本ソフトの言語の設定が問題のようです。
ただし,Windows2000/XPも完全に問題を解決してくれるわけではありません。Windows2000 や XP では,ロケールを変更する上述の方法で,ある程度外国語のソフトを活用することができます。反面,ソフトウエアを完全に32bitで動かすため,古い16bitの内部モジュールを想定して開発されたソフトは動かないことがあります。この理由で,CD-Perussanakirja (Edita) はこれら新しい Windows2000/XP上 で動かないことがあります。 (詳しく言うと,Windows2000 ないし WindowsXP (SP1適用以前) で CD-Perussanakirja を起動すると,user32.dll でアプリケーションエラーが起こります。Windows の主要なモジュールである USER.EXE が Windows2000/XP で32bit化し,アプリケーションと USER.EXE の受け渡しをする user32.dll が16bitでの呼び出しをサポートしなくなったことが,Windows9x と Windows2000/XP の大きな違いのひとつです。)
補足:その後,WindowsXP SP1 上で再度試してみたところ,驚くべきことに CD-Perussanakirja が使えるようになっていました! (ただし,ロケールの変更が必要です。) Windows2000 での動作については確かめておりません。
WindowsXP では,起動するソフトウエアの想定する Windows のバージョンを「互換性」タブで指定することができます [画像]。設定次第では,インストールしただけではうまく動かないソフトも使い続けることができることがあるようです (互換性設定の機能は Windows2000 にはありません)。しかし,このような設定を試みても,(SP1 適用以前の WindowsXP では) 残念ながら CD-Perussanakirja は復活しませんでした。
2003年6月に Microsoft から Microsoft AppLocale Utility なるツールがリリースされ,Windows XP ないし Windows Server 2003 上に限って,設定したロケール以外の言語用に作られたプログラムをそのまま実行できる可能性がでてきました。
AppLocale は外国語のプログラムを「ラッピング」して起動します。直接プログラムを起動するのではなく,AppLocale がそのプログラムを呼び出すようにすることで,AppLocale がそのプログラム用に指定されたロケールで仲介してくれるわけです。
ロケールを suomi (フィンランド語) に設定 | 起動アイコンのプロパティ: 「リンク先」には AppLocale を介して プログラムが起動するよう,パスが生 成されている |
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早速日本語版と英語版の Windows XP 上で試してみました。結果は,残念!CD-Perussanakirja は起動せず。また WSOY の辞書は起動するも,メニューの文字化けはそのままで,ウムラウトなどの記号つきアルファベットの入力は依然としてうまくいきません (と,いうことは普通に日本語環境で起動したときと変わりないじゃないか!)。難しいものです。ツールのReadme 5.0: Known Issues [Internet Explorer 用のアーカイブ (MHTML) です] には 16ビットアプリケーションは AppLocale を介して実行することはできないこと,またテキストの入力がうまくいかない可能性があることが制限として書かれています (16-bit application are not supported by AppLocale
; Input Method Editors (IME) might not properly function in some private or owner drawn edit controls.
)。利用できるアプリケーションの検証実績については,AppLocale の ReadMe 6.0: Tested Applications [Internet Explorer 用のアーカイブ (MHTML) です] に掲載されています。
今回はうまくいきませんでしたが,再起動することなく別のロケールのプログラムを起動できるラッピングツールのメリットは計り知れません。現在バージョン 1.0 のこのプログラムが今後も更新されていくことを期待します。
AppLocale のソースは公開されておらず,サポートもありません。また,AppLocale の利用はあくまでも他の言語用のツールを一時的に利用する場合にとどめ,頻繁に利用するソフトについてはロケールを変更するよう Microsoft は強く勧めています。
CD-Perussanakirja の新しいバージョン Kielitoimiston sanakirja が2004年についに発売されました。フィンランドの自然言語処理ツール開発で有名な Kielikone 社とフィンランド内国語研究所の共同開発によるソフトは Unicode に対応し,日本語 Windows 2000/XP ユーザがそのままフィンランド語を入力できるようになりました。
CD-perussanakirja に4,000語が加えられたほか (といっても,なぜか収録語数は変わらず10万語なんですけどね),15,000あまりの語彙項目が加筆修正されたとのこと。さらに,「地名インデックス」 Asutusnimihakemisto でフィンランドの地名が語形変化情報とともに検索できるという,大変便利な機能もついています。
Lehtinen, Marja & Eija-Riitta Grönros (Editor in Chief) 2004 Kielitoimiston sanakirja. Helsinki: Kotimaisten kielten tutkimuskeskus & Kielikone Oy. ISBN: 952-5446-11-5 標準価格 150ユーロ.
なお,CD-Perussanakirja と Kielitoimiston sanakirja の編集主幹を務められた Marja Lehtinen さんは志半ばにして2003年に亡くなられました。私自身,フィンランド内国語研究所を訪ねる際に何度お世話を頂いたかわかりません。彼女のご冥福を心よりお祈りします。