6.足・鞋に関するもの
中国で最も早期の鞋は、動物の皮で作られた「獣皮」「裹脚皮」であると考えられていて、いわゆる西域の新疆ウィグル族自治区の楼蘭から出土した約4000年前と推定される「羊皮靴」があげられる。漢族の支配する中原地区に皮靴が進出するのは、戦国の七雄の1つである趙の武霊王が軍隊に胡人(西域の民族)の服装を採り入れたことによるというのが定説となっている。その後、しだいに各地に普及していくことになる。
しかし、中国の鞋の発展は、西域・北方は跣足(はだし)から獣皮で足をくるむことからはじまるが、南方では、はだしから植物を鞋として編むことに発展したのではないかと考えられている。植物とは、水中或いは水辺で生長する蒲(ガマ)・芦葦(アシ・ヨシ)・薄(ススキ)・葛(クズ)等を利用し、その後、麻・稲わら・藤つる・トウモロコシの皮等を材料とすることになったと推定される。また、中国独自の伝統習俗である纏足(てんそく)は、五代南唐(937〜975)の頃に起源し、宋朝(960〜1279)から清朝(1644〜1911)まで隆盛を極めたことも考慮し、施術の様子・脚の手入れ法等にも配慮しなければならない。



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1.修脚刀 画像へ→
修脚(シュウジイアオ)とは、足指の手入れをすることで、とくに入浴後などに爪を切りそろえたりして、きれいにすることをいう。専門の職人が使用する道具は、牛革製のサックに先をスペード状に模した小刀を2本容れたもの。
2.蒲鞋・蒲施鞋 画像へ→
蒲鞋(プーシイエ)・蒲施鞋(プートウシイエ)は、黄河下流域に位置する山東省博興県のもの。窪地が多く、水はけが悪く、蒲草が生茂る土地柄であったため、当地の者は蒲草を使った日用品を作るようになった。蒲鞋はそれ自体が軽く、もじり編みの技法で「鞋」に仕立てたもの。保温性が高いことから冬季に着用する。現代式のスリッパ型の蒲施鞋は、日本にも輸出されている。
3.草鞋・草履 画像へ→
草鞋(ツァオシイエ)・草履(ツァオリ)は、稲わらを利用するため水田稲作の地帯に見られる。安徽省和県のものは、稲わらと麻縄を材料にし、足指を保護する部分が付いている。四川省金堂県のものは、稲わらと一部ビニール紐を使用するなど、実用性に疑問が残る。貴州省従江県のミャオ族のものは、糯米の稲わらを材料に伝統的に製作されている。
4.虎頭鞋 画像へ→
虎頭鞋(フートウシイエ)は、子供の鞋の先端に虎・鶏・鵝・猪・蛙・兔等の動物の顔を刺繍し、子供の健康と安全を願う。「虎頭鞋」が最も多い。山東の農村では、子供の母方の祖母(姥姥 ラオラオ)が、満1歳の誕生日を祝って贈る。
5.綉花鞋 画像へ→
綉花鞋(シュウホワシイエ)は、綉鞋・綉履とも称され、花柄の図案を刺繍した鞋をいう。鞋の先端を尖らせ、鞋底は厚紙や布切れを何枚も縫い重ねた平底で、側面の布に花柄の刺繍を施す。西南中国の少数民族地帯では、娘の嫁入りの時に穿かせる習慣が最近まで残存していたため、本来は漢民族のものでありながら入手が可能であった。
6.小脚弓鞋 画像へ→
小脚弓鞋(シアオジイアオ コンシイエ)は、纏足(てんそく)の女性のための鞋で、親指を除いた4本の足指を足裏に折り曲げて布でしばりあげて纏足した。4〜5歳からはじめたが、「金蓮三寸」と称される美しい小脚にするには、水がめ一杯の涙を流さなければならなかったという。
7.鞋花画像へ→
鞋の中敷。花柄や吉祥紋様などを刺繍したもの。本来は漢民族の習慣と思われるが、トン族等の少数民族の手仕事として残存。
8.木雕永偕同心鞋形挂件画像へ→
鞋は木質の漆絵で、「鞋」と「偕」は同音であることから婚礼等に身につけて参列した。「同偕到老」の意味である。旧時の習俗では、一足の鞋は、相手を求めていることを示し、一双(1組)の鞋は「偕老」(ともに老いる)の意味である。
9.上海軟牛皮底布鞋画像へ→
鞋底に軟らかい牛革を使用した室内履き。側面の布地に黒繻子を使用し、美しい花柄の刺繍とともに華やかでモダンな印象を与える。
10.木屐画像へ→
 木屐(ムージ)は、日本でいう下駄(げた)のことである。雲南省のハニ族をはじめ西南中国の少 数民族の間で使用されている。貴州省従江県のスイ族のものは、かつては雑木で台を作っていたが、現在では杉の木を用いている。鼻緒は糯米の稲わらで編むが、布を巻きつけることもあったという。スイ後では「ソー」といい、雨の日などに使用したという。
11.画像へ→
子(ワーズ)は、旧式の布製靴下。日本の足袋(たび)は、Y頭子(ヤートウワーズ)という。貴州省台江県のミャオ族のもので、足底には布を補強するために刺し子縫いのように針目が細かく刺してある。かつては、漢族にも広く使用されていたと考えられる。





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