中国では、1990年代半ばになると「改革開放」路線が軌道にのり、経済的に余裕が出始めた。すると、「世紀末」を意識してか、晩清から民国初期にかけての20世紀初頭に主に中国に滞在した欧米人の撮影した老照片(古写真)を整理し、出版することが一種の流行となり、20世紀を全体をふりかえることがしきりに行なわれた。それらの何点かの出版物を眺めていると、かつての日常生活の中で使用された家具や道具――民具のことが、しきりに気にかかるのは私だけであろうか?
また、現在の北京ではオリンピック開催を目指して空前の建設ラッシュである。旧い胡同(横丁)の取り壊しが急ピッチで行なわれ、高層ビルが出現している。また、上海の経済発展による旧市街地の再開発・浦東地区のインフラ整備は北京以上のスピードである。多くの地方都市の開発ラッシュも眼をみはるものがある。これらの開発に伴なう急激な変貌に戸惑いながら、一種のノスタルジーを感じる中国の人々もけして少数派ではないのであろう。最近では、日常生活から急速に失われつつある「物」を解説する本の出版も相次いでいるようだ。これらの関連資料を使用しながら、私自身もおくればせながら「物」を実際に収集しながら、微力ながら「中国の民具」の考察を試みることにする。なお、「民具」とは実際には生活用具全般にわたることから、整理がついた項目から少しずつ本HP上で公開していくことにしたい。 |